これまでに新薬メーカーにとって薬価改定をはじめ厳しい環境であることは述べて参りましたが、その中で希少疾病用医薬品であることが加算の要件になることをお伝えしました。
そうした背景や承認申請のスピードが他の医薬品に比べて早いなどの公的な後押しに加えて、多くはなくても患者さんがその医薬品の誕生を強く待ち望んでくれていることや、新薬の開発が成功しやすい環境づくりが、中堅メーカーのみならず大手製薬メーカーのオーファンドラッグ開発意欲をもたらしています。
今回は、これからの創薬市場とオーファンドラッグについてです。
近年承認された主なオーファンドラッグ
効能・効果 | 一般名 | 商品名 |
---|---|---|
新型インフルエンザ(H5N1) | 細胞培養インフルエンザワクチン | 細胞培養インフルエンザワクチン |
悪性神経膠腫 | ベバシズマブ | アバスチン |
多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎 | タクロリムス水和物 | プログラフカプセル |
パンデミックインフルエンザ | 細胞培養インフルエンザワクチン | 細胞培養インフルエンザワクチン |
HIV-1感染症 | コビシスタット、エルビテグラビル | スタリビルド |
脂肪萎縮症 | メトレレプチン | メトレレプチン |
急性リンパ性白血病 | クロファラビン | エボルトラ点滴 |
急性ポルフィン症患者における急性発作 | へミン | ノーモサング |
慢性リンパ性白血病 | オファツマブ | アーゼラ |
Lennox-Gastaut症候群における強直発作および脱力発作 | ルフィナミド | イノベロン |
悪性神経膠腫の腫瘍摘出術中における腫瘍組織の可視化 | アミノレブリン酸塩酸塩 | アラベル内容剤、アラグリオ内容剤 |
低リン血症 | リン酸二水素ナトリウム一水和物 | ホスリボン配合顆粒 |
腎血管筋脂肪腫、上衣下巨細胞性星細胞腫 | エベロリムス | アフィニトール |
ハンチントン病 | テトラべナジン | コレアジン |
悪性軟部腫瘍 | パゾパニブ塩酸塩 | ヴォトリエント |
Dravet症候群患者における間代発作または強直間代発作 | スチリペントール | ディアコミット |
HIV-1感染症 | リルピビリン塩酸塩 | エジュラント |
らい性結節性紅斑 | サリドマイド | サレドカプセル |
製薬協HPより
日本製薬工業協会(以下製薬協)によると、今後想定される環境変化として、創薬のパラダイムシフトと医薬品に対する需要の地球木尾での高まりを挙げています。
生命科学や医療技術の目覚ましい発展により、生活習慣病等の大規模市場を有する疾患に対する医療水準の向上が治療満足度を高めるとともに、難病・希少疾患をはじめとするアンメットメディカルニーズの顕在化が進んでいると「製薬協 産業ビジョン2025」の中で指摘しています。
とくに日本の製薬メーカーにおける創薬は、これまで生活習慣病領域を中心としてきました。
が、今後増大する社会保障費を背景に、後発医薬品へのスイッチングがますます国の政策として推し進められていくなかで、承認までのかかる時間が少なく開発にあたって支援を受けやすいというメリットがあり、患者数は少ないが治療薬を待ち望んでいる世界中の患者・世界の市場にアプローチしていくことが求められています。