これまで、薬事申請をリードするエキスパートとしてQC・QA・RAの3つの仕事をご紹介してきました。
治験をあるべき姿へと調整し実施していくという共通目標から、業務上求められる要素にも共通点が非常に多いこれらの仕事ですが、医薬品・医療機器を取り巻く環境の変化から近年推進されているレギュラトリーサイエンスについてご紹介します。
レギュラトリーサイエンスとは、「科学技術の成果と人と社会に役立てることを目的に、根拠に基づく的確な予測、評価、判断を行い、科学技術の成果と人と社会との調和の上で最も望ましい姿に調整するための科学」(第4次科学技術基本計画 平成23年8月閣議決定)とされています。
つまり、科学技術がもたらすメリットとデメリットを予測・評価するために、評価科学の研究を深め、望ましい姿に導けるよう調整していく科学技術であり、これはまさに薬事申請に必要不可欠であり、平成26年5月に制定された医療戦略推進法において、「医療分野の研究開発の成果の実用化に際し、その品質、有効性及び安全性を科学的知見に基づき適正かつ迅速に予測、評価及び判断することに関する科学の振興」を図っていくという国の方針を打ち出しました。
産官学の専門家が対等の立場で一堂に会して、医薬品、医療機器等のレギュラトリーサイエンスに関する学術の進歩と普及を図るとともに、会員相互、関連学会及び国民との連携の場となる事を目的に、平成22年8月にレギュラトリーサイエンス学会が設立されました。医薬品等の研究開発、品質・非臨床・臨床・市販後を通じた新しい試験や評価の方法、リスクベネフィット評価のあり方、ICH等の国際的な動向とその対応など、シンポジウムや研修会などの開催しています。
また、日本薬学会においてもレギュラトリーサイエンス部会が設置され、先端技術を利用して開発・製造される画期的医薬品の臨床応用、あるいは利便性に優れた新規化学物質等の開発と市場への導入、あるいは食生活の変化に応じた食品等の安全確保において、新技術の成果を安全かつ速やかに社会に広めていくうえで重要であるとし、この分野の研究がさらに佳発に進むことを期待し、医薬品レギュラトリーサイエンスフォーラム、医薬品評価フォーラムなどの学びの場を主催することで教育普及に努めています。
こうした流れの中、PMDAは平成30年4月1日にレギュラトリーサイエンスセンターを設置し、承認審査及び安全対策の質を向上させるとともに、科学的エビデンスを積極的に発信・ガイドライン等を発出することで、世界に先駆けた審査・安全対策等に取り組む方針を打ち出しました。
目まぐるしく進歩する科学技術・医療技術に比例するように、次々と生まれる新薬の種。必要とする世界中の患者さんにいち早く届けるため、レギュラトリーサイエンスに関する研究が加速度的に進展しています。
【レギュラトリーサイエンス学会】ホームページはこちら
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