2018年4月1日、「臨床研究法」という一つの法律が施行されました。
この法律は、大手製薬企業によって臨床研究において不正が行われていたことが発覚したことをきっかけに、臨床研究の透明性と安全性を確保し、医薬品の有効性・安全性を明らかにするために制定されました。医薬品や医療機器等の有用性や安全性の有無を証明する臨床研究が正しく実施されることは、製薬企業のみならず処方する医師や処方される患者さんにとっても非常に重要です。施行から数か月、臨床研究法の目的や概要を理解し、医薬品の安全性と信頼を司るスペシャリストとしてチームをリードしていきましょう。
臨床研究法(平成29年法律第16号) |
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第1条(目的) |
「ディオバン」や「ブロプレス」といった薬剤の臨床研究においてデータの操作やメーカーによる関与があったというニュースが大きな衝撃を伴って報道されました。
言うまでもなく、医薬品・医療機器等は命を扱う重要なものであり、その有効性や安全性を証明するために、臨床研究は非常に重要な研究です。その臨床研究への信頼性が揺らいでしまえば、医療関係者や患者さんをはじめ、多くの人々が不安と混乱に陥ってしまいます。
そのため、国民の臨床研究に対する信頼の確保を図るため、これまでの倫理指針に基づいた実施・指導から法律に基づいた実施・指導体制を整えるべく法的規制が急務であるとの指摘から、「臨床研究法」が2017年4月に公布、2018年4月1日に施行されました。
臨床研究法の対象となるのは、特定臨床研究と定義される次の臨床研究です。
特定臨床研究 |
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治験届の届け出が義務付けられている新薬等の治験や、医薬品医療機器等法に基づき、GCP症例等の遵守が義務付けられている試験(①医薬品、医療機器又は再生医療等製品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する各省令に規定する製造販売後調査等、②治験届の届出が義務付けられていない治験※1、③医薬品医療機器等法第23条の2の23第1項の厚生労働大臣が定める基準への適合性に関する情報収集のために行う試験※2)、通常の診療行為を行い、その経過や結果等について評価を行ういわゆる観察研究※3は臨床研究法の対象外となります。
※1
生物学的同等性を確認する治験等が該当
※2
JIS規格に規定するものに限る
※3
個々の患者に対する最適治療を目的とせず、複数の医薬品等を比較する目的で実施するものは、観察研究に該当しない。
なお、企業等からの資金提供のうち、財団などが公正に公募を行って実施される臨床研究は対象外となっています。
厚生労働省:臨床研究法について【詳しくはこちら】